#442 自然が、動物脳をよみがえらせる
あなたの自然さが、好き。
あなたと、お寺に行った。
最後の紅葉だった。
枯れ葉が、風で舞っていた。
紅葉は、色づき始める頃もいい。
燃えるような盛りもいい。
それ以上に、枯れ葉になって、舞う瞬間がいい。
地面に落ちているのも、いい。
地面の落ち葉が、さっき降った雨で、濡(ぬ)れているのもいい。
通り道が、落ち葉のクッションで、ふかふかするのもいい。
歩くたびに、落ち葉のクッションから、紅葉の香りが立ち上る。
舞っている落ち葉からも、香りが漂う。
遠くの景色まで、見える気がする。
あそこに、あんな山があったことに、今まで、気づかなかった。
葉が落ちたせいで、視野が開けたのか。
それとも、落ち葉の香りで、視力が研ぎ澄まされたか。
落ち葉の香りと、ふかふかする足元。
これは、どこかで、感じたことのある快感。
なんだ。
自分で、笑ってしまった。
香りと快感といえば、今一緒に歩いているあなたの専売特許。
自然の中に行くと、五感が研ぎ澄まされる。
鈍感な頭でっかちの人間から、鋭敏な動物に帰してくれる。
あなたは、自然。
あなたといると、見えなかったものが、見えてくる。
聞こえなかった音が、聞こえてくる。
感じなかった感覚が、よみがえってくる。
あなたの自然が、私の脳を刺激する。
本能を、かきたてる。
忘れていた子供の頃の、テレパシーをよみがえらせてくれる。
あなたは、ほほ笑んでいる。
自然の中に、溶け込んでいる。
私は、自然に、抱き締められていた。