#445 あなたの中に、入りたい
あなたの中が、好き。
あなたが、私の中に、入ってくる。
そのはずなのに、不思議な感覚になる。
私が、あなたの中に、入っている気がする。
あなたを通して、目の前に、小さな点が見える。
その点が、少しずつ、大きくなって、小さな丸になる。
小さな丸が、中くらいの丸になって、大きな丸になっていく。
丸の向こう側には、何も見えない。
私は、丸の中に、吸い込まれていく。
丸の中には、何があるか分からないけど、体を入れてみる。
丸の中は、心地いい。
思っていたより、丸の中は広い。
底も、壁も、天井もない。
先も、どこまでも続いている。
重力もない。
落ちるわけでもない。
私の体は、丸の中に、入っている。
体を入れてみたというよりは、全身入ってしまっている。
実際には、丸を通して、向こう側に入ったという感じ。
入ってしまえば、もはや向こう側ですらない。
女性の体は、男性の体を包み込むようにできている。
そのはずなのに、私は、あなたの広げてくれた穴の中に、入り込んでいる。
穴の中に入るって、気持ちいい。
安心する。
この安心感は、なんだろう。
石器時代のご先祖様が、洞窟に暮らしていた安心感。
生まれる前に、母親の胎内にいた安心感。
かすかに、丸の中に入ったという記憶だけが残っている。
戻らなければという不安感は、微塵(みじん)もない。
もっと、もっと、あなたの中に、入りたい。