#458 近づいているのに、離されていく
あなたの加速度が、好き。
あなたに会う前は、この前に会った時から、だいぶ成長している自信を持っている。
あなたは、成長させてくれる。
優しくて、厳しい。
あなたに会うと、うれしいと同時に、汗びっしょりになる。
冷や汗だ。
暑くなる。
恥ずかしさからだ。
あなたは、何を言うわけではない。
襟を直してくれたりする。
ジャケットの着方を、直してくれたりする。
それ以上、何も言わない。
次に会うまでに、頑張ろうと思う。
恥をかきながら、成長する。
これだけ恥をかいているんだから、成長できたと感じる。
「どうよ」という感じで、あなたを待つ。
あなたが来ると、私の自信は、崩れ去る。
追いついたとは、言わない。
少しでも、近づいたと感じていた。
ところが。
会った瞬間、あなたは、はるか彼方(かなた)に進んでいる。
成長の速度が、違う。
加速度も、違う。
戦闘機を、ママチャリで追いかけているような感じ。
あなたは、ほほ笑んでいる。
何も言わない。
ただ、服をちょっと、直してくれる。
ショーウインドーのガラスに、あなたと一緒に映らないように、気をつける。
恥ずかしすぎる。
世の中には、どうしてこんなに鏡が多いのかと思ってしまう。
よし、次、頑張ろうと思う。
頑張って、成長する。
そして、次に会う時にはまた、遠く離されている。
それが、好き。