#460 クリアな陶酔
あなたのかけてくれる紳士の催眠術が好き。
あなたは、催眠術をかけてくれる。
催眠術にかけてもらうのが、好きなんじゃない。
紳士に、催眠術をかけてもらうのが、好きだ。
紳士じゃない人には、何をされても、気持ちが悪い。
あなたの催眠術は、今まで思っていた催眠術と違う。
「3つ数えると、眠くなります」式のものだった。
催眠術にかかると、意識がなくなると思っていた。
あなたの催眠術は、違った。
意識が、そのまま。
むしろ、明瞭になる。
普段より、冴(さ)えていく感じがする。
催眠術が解けると、かかっている間のことは、何ひとつ覚えていないものだと思っていた。
あなたの催眠術は、違った。
事細かく、覚えている。
記憶に、くっきり焼き付く。
ただ、覚えているだけではない。
細かいところまで、覚えている。
しかも、会っている間の時間より、はるかに膨大な量を記憶している。
普段より、クリアになって、しかも陶酔感がある。
意識がなくなっての陶酔感では、意味がない。
意識がキンキンにクリアなのに、陶酔感がある状態を、味わいたい。
そんなものがあるなんて、知らなかった。
あなたが、教えてくれた。
あなたの催眠術は、いつからかかって、いつから解けているのか分からない。
私がもしグチっぽくなったら、あなたが催眠術を解いた瞬間に違いない。
解くのは、あなた。
催眠術を解かれないように、気をつけないと。
ずっと、クリアな陶酔を味わっていたいから。