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#470 吸い込まれるような、キャッチボール

あなたのキャッチボールが好き。
あなたと歩道で、信号待ちをしていた。
向かいの歩道に、美人のママと男の子がいた。
男の子は、野球のユニホームを着て、手にはグラブを持っていた。
男の子が、こちらに向かって、ボールを投げた。
驚いた。
実際には、投げるふりをした。
そのエアのボールを、あなたが受け取った。
周りに、大勢の人が信号待ちをしていたけど、受け取ったのは、あなた1人だった。
男の子も、あなたが受け取ってくれる人と分かっていて、投げたに違いない。
あなたは、グラブを引き寄せながら、一筆書きのように、ボールを男の子に、投げ返した。
その導線が、あまりにも美しかったので、男の子が、本当にボールを投げたのかと勘違いした。
ボールは、エアだった。
あなたがボールを受け取ってから、男の子に投げ返すまでの映像を、私の心のリプレイ映像で、スローモーション再現をしてみた。
あなたが、ボールを、グラブで引き寄せる。
その時、あなたの体が、卵を抱き締めるように、丸まる。
そして、丸まった体が、胸から順番に開いていく。
あなたの胸が開いているのに、あなたの手はまだ、胸の前のグラブの中に収まっている。
よどみない。
あなたがボールを受け取るときと、広がり始めるときの2回。
羽が広がるのが、見えた。
筆を立てる瞬間に見た羽だ。
あなたの投げ返したボールが、男の子のグラブに、吸い込まれていった。
キャッチボールの上手なあなたが、セクシー。



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