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#472 あなたの呼ぶ、名前になる

あなたの、私の呼び方が好き。
昔のことが、思い出せない。
記憶喪失になったみたい。
あなたと出会ってからのことは、明確に思い出せる。
あなたに出会うまで、私は何をしていたのか、思い出せない。
むしろ、どうだっていい。
あなたが、私の記憶の上書きをしてくれた。
あなたと出会う前から、あなたのことは知っていた。
そのとき、あなたのことをどう思っていたかは、思い出せない。
それも、どうでもいい。
新入社員のころ、上司に叱られたことがある。
「さっきの指示と、今の指示が違うんですけど、どっちが正解ですか」
生意気ざかりの私は、上司に食ってかかった。
そういうことが、たびたびあったからだ。
そのとき、上司は、言った。
「あとのほうが正解に、決まってるだろう」
その通りだった。
人生で、すごい教訓を教わった気がした。
誰かに出会って、出会う前のことを思い出せるようでは、大した出会いではない。
本当の出会いは、生まれ変わりと同じだ。
前世の記憶は、吹っ飛んでしまう。
自分の名前すら、思い出せなくていい。
あなたがそう呼ぶなら、それが私の名前になる。
あなたは、人を記憶喪失にさせる。
過去に、どんなにつらいことがあっても、忘れさせてくれる。
過去に、どんなにハッピーなことがあっても、どうでもいいくらい、もっとハッピーな記憶をつくってくれる。
前の記憶のファイルは、全部、消去していい。
ちっとも、惜しくない。
だから、あなたと出会う前の記憶は、全く再生の必要がない。
その分のキャパは、あなたとの記憶に空けるから。
あなたが、私の名前を呼ぶ。
その名前、気に入ってる。



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