#478 あなたの肩に止まる、花びらのように
あなたの肩が、好き。
あなたと、歩いていた。
突然、何かが、ひらひらと落ちてきた。
一片の花びらだった。
その花びらは、春風に舞いながら、あなたの回りを回った。
そして、着地するかのように、あなたのダークネイビーのスーツの肩に、止まった。
まるで、チョウが止まるように。
桜の花びらだった。
ダークネイビーの上質の生地に、桜の花びらが、映えた。
そういえば。
前にも、同じ景色を見たことがあった。
黄色いチョウが飛んできて、あなたの肩に止まった。
トンボが、止まったこともあった。
カナブンが、止まったこともあった。
あなたの肩は、自然界の休憩所になっている。
昆虫も、植物も、一番心地いい場所を知っている。
あなたの肩に止まったら、あんなに繊細なトンボですら、しばらく離れない。
あなたも振り払わない。
あたかも、ペットのように、肩に載せて運んでいる。
まわりを見渡した。
桜の樹は、見当たらなかった。
あなたの肩の花びらは、どこから飛んできたのだろう。
たぶん、ずっと遠くから、あなたを探して、飛んできたに違いない。
やっと、見つけた。
花びらが、幸せそうに、ほほ笑んでいる。
その花びらは、あなたの肩に止まるために、生まれてきたのね。
あなたの肩に止まるために、咲く春を待っていたのね。
私も、知っている。
あなたの肩の心地よさを。
もはや、肩ではない。
桜の花びらと私は、同じ心地よさを知っている姉妹になった。