#486 一緒に、かくれんぼ
あなたとのかくれんぼが、好き。
あなたと、フレンチレストラン。
満席。
ダブルクロスが、かかっている。
ソースを絶対こぼせない上質なテーブルクロス。
私は、ゴキゲン。
オシャレなフレンチレストランにいるからじゃなくて。
あなたと、こうしていることができるから、ゴキゲン。
お気に入りのピアスをしてきているし。
あれっ?
右のピアスが、ない。
さっき、化粧室に入った時は、あった。
左は、ある。
頭の中の映像を、プレイバックする。
そうだ。
さっき、ダブルクロスをなでたとき。
何か光るものが、転がっていった。
あれが、私の右のピアスだった。
ゴキゲンなときに限って、ピアスは、転がってくれる。
足元に転がっていないか、探した。
ない。
クロスをめくってみた。
ない。
とうとう、椅子から降りて、しゃがんで探してみた。
フカフカのカーペット。
そんなに遠くには、行ってないはず。
気がつくと。
あなたも、テーブルクロスの下に入って、探してくれた。
「何を、ニコニコしてるの」
あなたが、ニコニコしながら、聞いた。
だって、テーブルの下に、あなたとこんなふうに、かくれんぼしてるみたいに潜り込んでるなんて、ロマンティック。
ずっと、こうしていたい。
ほんとはね、さっき見つけたんだけど、まだあなたには内緒。