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#503 大きすぎて、見えない

あなたの見えなさが、好き。
あなたと、古墳を見に行った。
あなたは、古墳の多い街で、育った。
古墳を遊び場にしていたと聞いて、驚いた。
入れない古墳と、入れる古墳があるという。
入れる古墳は、もはや、それが古墳なのか、空き地なのかの区別がつかない。
なぜか、そこだけ空き地が残っているところは、昔の古墳だった。
大きな古墳に連れて行ってくれた。
「これだよ」と言われるまで、それが古墳であると気づかなかった。
いつになったら、巨大古墳にたどり着くのかと、思っていた。
森だと思っていた。
よく見ると、盛り土の上に、木が茂っていた。
あたりを見渡した。
これだけ大きなものなら、きっと、上から眺める設備があるに違いない。
塔が、見えた。
その塔は、展望台ではなく、記念碑だった。
せっかく大きなランドマーク・オブジェなのに、展望台を作らないともったいないと感じた。
でも、あなたは、ほほ笑んでいた。
私は、気づいた。
ここに、展望台があってはいけないのだ。
全体像が、簡単に見えてはいけない。
つい、なにかを見るとき、展望台を求めてしまう。
本当は、想像で、空から眺めることが大事なのだ。
全体像が見えたと思ったら、見た気分になってしまう。
そのとき、何かを見失ってしまう。
見るというのは、確認するということではない。
大きなものは、大きすぎて見えない。
「つまらない」と言うとき、その人は「大きすぎて見えない」と言っているのと同じだ。
私には巨大古墳が、あなたに見えてきた。
あなたは、大きすぎて、見えない。



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