#518 硬い殻を、脱がして
あなたが、脱皮させてくれるのが好き。
あなたと、夜の水族館。
何もいない水槽があった。
水草だけがある。
これは、こういう展示なのかな。
何もいないのではなく、よく見ると、藻の陰に、何かいた。
小さなエビだった。
体が、クラゲのように透明だった。
よく見ると、2匹が重なっていた。
違った。
殻が外れていた。
脱皮だった。
透明の殻を脱いで、中から新しい殻が現れていた。
朝、セミが脱皮をしているのを見たことがある。
なんだか、セクシーな気がする。
そう言えば、脱皮の瞬間を、よく目撃する。
そんなに多くないはずなのに、きっと、私が脱皮フェチなのかもしれない。
水族館で、まさかエビの脱皮を見れるとは。
しばらく、目が離せなかった。
セクシー。
見てはならないものを、見ている気分だった。
透明な殻の下から、透明な殻のエビが現れた。
奇麗だった。
軟らかそうだった。
そこへ、もう1匹、別のエビが現れた。
そして、脱皮したばかりのエビに、くっついた。
交尾だった。
脱皮をした直後に、交尾をするというのは、よくあることらしかった。
私は、ベッドの中でのことを、思い出した。
あなたは、私を脱皮させてくれた。
何度も、何度も、脱皮させてくれる。
そのたびに、私は、硬い殻から解放される。
このエビは、私だった。