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#522 ブラック、ときどきブルー

あなたの目の色が好き。
あなたと、歩いていた。
ふと、向こうから、あなたが歩いてきた。
あら。
今、私は、あなたと歩いていたのに、どうして、あなたが向こうから歩いてくるの。
向こうから歩いてきたのは、あなたではなかった。
シベリアン・ハスキーだった。
向こうから歩いてきた散歩のシベリアン・ハスキーが、あなたに見えた。
たしかに。
あなたは、シベリアン・ハスキーに似ている。
シベリアン・ハスキーが、あなたに似ている。
あなたの目が、ときどきブルーに感じるときがある。
シベリアン・ハスキーの目も、ブルー。
凛々(りり)しい眉を持っている。
きりりとしているのに、優しい。
尻尾を振って、近づいてくる。
シベリアンくんは、あなたを見ている。
尻尾を振っているのは、あなたに対してだった。
犬は、人間が気づかない、何かに気づく。
シベリアンくんは、あなたが王子であることに、気づいたね。
同じシベリアン・ファミリーであることにも、気づいたね。
近づくと、大きかった。
あなたの前に近づくと、シベリアンくんは、伏せの姿勢を取った。
あなたを見上げて、尻尾を振っている。
飼い主の品のいい女性が、驚いていた。
好き嫌いが激しくて、めったに よその人に、尻尾を振ることはないのにと。
大きいのに、優しい。
それも、あなたに似ている。
あなたが、シベリアンくんに優しい笑顔を、差し向ける。
シベリアンくんが、うれしそうに、親愛の笑顔を返す。
今、きっと、あなたの目は、ブルーになっているに違いない。



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