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#525 私まで、軽くなる

あなたの手の軽さが好き。
あなたと、歩いている。
あなたが、手をつないでくれた。
そのあと、小さな階段が現れた。
「気をつけて」
とは、言わない。
私の手も見ない。
さっと、手を出してくれる。
気がついたら、手をつないでいる。
手をつなごうとしていない。
あなたの手の軽さは、なんだろう。
無重力。
私の手まで、無重力になっている。
重さを感じないどころか、空に持ち上げられそうになる。
子供のころ、遊園地で買ってもらった水素の風船みたい。
遊園地の楽しみは、乗り物より、水素の風船だった。
あの水素の風船の感覚が、あなたと手をつないだとき、よみがえる。
あなたと会うまで、疲れていた。
疲れていると、体重がいつもより、重く感じる。
階段ではなく、エスカレーターを探してしまう。
あなたに手をつないでもらって、体が軽くなった。
階段が、平気になる。
むしろ、あなたと一緒に、階段を上りたい。
東京タワーの600段の外階段でも、上りたくなる。
体が軽くなると、心が軽くなる。
自分だけが軽くなるのではなくて、私まで軽くしてしまうあなたは、どんな魔法を使っているのだろう。
やっぱり、あなたの背中には、羽がある。
あなたは、軽く歩いているのではなくて、羽で飛びながら、ときどき足を着けているだけ。
あなたと歩きながら、私も道を飛んでいる。



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