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#526 足首を、持って

あなたの、足首の持ち方が好き。
お部屋に入った。
靴を脱ぐ前に、私の前に、ひざまずいた。
「足を、見せてごらん」
というのを、テレパシーで感じた。
今日、あなたに見せたくて、おニューのヒールを履いてきた。
まだ慣らしていなかったので、少し痛かった。
あなたは、気づいていた。
私は、黙っていたのに。
いつもより、ゆっくり歩いてくれていた。
私の靴を、優しく脱がしてくれた。
靴擦れが、できていた。
あなたは、ジャケットのポケットから、救急ばんそうこうを出して、私のかかとに貼ってくれた。
いつのまに、ガーゼ付きばんそうこうを買っていたんだろう。
薬局には、寄らなかったのに。
そういえば。
食事をしたあと、ホテルのコンシェルジュに寄っていた。
あのとき、受け取っていたに違いない。
そして、できるだけ歩かないようなコースを選び、タクシーに乗った。
あなたは、ばんそうこうをヒールの かかと部分にも貼った。
ヒールにも、優しいあなたに、キュンとした。
私のかかとが擦れるということは、ヒールのかかとも擦れているということ。
あなたは、人間にも、物にも、優しい。
足首を、優しくマッサージしてくれた。
足首が、かばうために、緊張していた。
あなたのマッサージで、ほぐれた。
あなたは、優しく、足首をなでてくれた。
あなたが、私の足首を握った。
これは、反則でしょ。
私の足首が、無重力になった。
勝手に、膝が開きそうになる。
勝手に、足を持ち上げたくなる。
サーキュラースカートまで、無重力になった。



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