#527 高速回転するコマのように、真っすぐ
あなたの、真っすぐが好き。
あなたと、教会に行った。
天井が、高い。
高い天井を見上げると、天井に向かって、落ちそうになる。
天地が逆転して、足がぐらぐらする。
高い天井における高所恐怖症みたいな不思議な現象が起こる。
あなたは。
あなたは、びくともしない。
真っすぐ、立っている。
真っすぐ。
天井の高いところに行けば行くほど、あなたの背は高くなる。
ぐんぐん、伸びていく。
あなたは、天井の高いところが、似合う。
あなたの体は、教会の中で、浮かんでいる。
ふわりと、浮かび上がりそうになる。
それでいて、足が、根が生えたように強い。
2本の足が、ピッタリくっついている。
止まっているのではない。
高速回転しているコマが見えた。
地面の中まで、あなたの足が、根のように伸びているのを、感じる。
あなたの背は、空まで高い。
あなたの足は、地球の中心まで、伸びている。
空と大地から伸びた見えない糸が、あなたの体の中を通り抜けている。
そして、あなたは、ほほ笑んでいる。
柱も装飾も、全てがあなたと同じように、テンションを保っていた。
あなたは、もはや教会の装飾の一部になっていた。
カップルが、入ってきた。
男性は、天井を見上げ、やはりぐらついていた。
その男性が、特別に残念なわけではない。
普通は、みんなそうなのだ。
男性がみんな、あなたのように、教会の装飾になるわけではなかった。
ほら、あなたは。
またさっきより、背が高くなっている。
太陽の塔のように、屋根を突き破っている。