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#532 私の鈴を、鳴らして

あなたの鈴の鳴らし方が好き。
あなたと、歩いていた。
ふと、小さな稲荷神社があった。
「お参りしていこう」
あなたは、小さな神社を見つけると、お参りをする。
一礼して、鳥居をくぐる。
あなたのお辞儀の仕方が、奇麗。
靖国神社に一緒に行ったとき、守衛さんが、あなたに敬礼をした。
あまりにお辞儀が奇麗なので、防衛関係の人と間違えられたに違いない。
前に、別の神社でも、あなたのお辞儀の仕方の奇麗さに見とれて、私はお辞儀を忘れたことがあった。
あとで気づいて、神様にお詫びをしておいた。
鳴らす鈴は、「本坪鈴(ほんつぼすず)」という呼び方があることを、あなたから教わった。
こういうことを知っているあなたが、好き。
あなたのご先祖様は、神社の仕事をしていたらしい。
今まで、ずっと「鈴」としか呼んでなくて、ごめんなさいという気分だった。
本坪鈴って、人の名前みたいで、かわいい。
「本坪さんちの鈴ちゃん」っていう感じ。
また、ごめんなさい。
神様のお話で、はしゃいでしまいました。
本坪鈴は、巫女(みこ)さんの神楽鈴から来ているという話を、あなたから聞いた。
本坪鈴の音色で、身を清める。
本坪鈴は、来たことを知らせるチャイムだと思っていた。
巫女さんの鳴らす神楽鈴の音が好き。
切れが、心地よい。
懐かしい響きがする。
ひょっとしたら、大昔、前世のどこかで、あなたとこの鈴の音色を聴いていたのかもしれない。
私は、巫女さんをしていた気がする。
そういえば、あなたが鳴らすと、本坪鈴は奇麗に響いた。
私が紐(ひも)を引くと、カランと1回、鳴っただけだった。
しかも、「紐」じゃなくて、「鈴緒」というらしい。
「紐」と呼んでいるようでは、奇麗に響いてもらえないのは、しかたないですね。
鈴緒で、神様の国とつながるそうだ。
早く、あなたに私の鈴を鳴らしてもらいたくなった。



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