#536 信号を、挟んで
あなたのテレパシーが、好き。
あなたと、待ち合わせ。
あなたを、信号を渡ったところで待つ。
夕暮れ。
大勢の人が歩いている。
あなたが、来た。
信号の向こう側。
どんなに大勢いても、あなたは目立つ。
浮かび上がっている。
そこだけが、パートカラーになっている。
うわっ。
この人と、私は、待ち合わせている。
それだけで、幸せな気分になる。
道幅は、広い。
「信号、長いね」と、誰かが言った。
そう言われてみると、この信号は、長い。
ということに、言われて初めて気づいた。
何度も、あなたと待ち合わせをしている。
長いと感じたことがない。
むしろ、もっと味わっていたい。
早く会いたい気持ちと、信号の向こうのあなたを眺めていたい気持ちと。
「僕も、同じことを考えてるよ」
あなたが、言った。
えっ?
知らないうちに、信号が変わって、あなたが来ていた。
信号は、まだ赤だった。
今の声は?
あなたのテレパシー。
ということは、私の独り言は、全部、聴かれていた。
「いいこと、言ってたよ」
聴かれていた。
それからしばらく、あなたと、信号を挟んで会話を続けた。





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