#538 美術館の中で、愛されて
あなたの、いつも通りが好き。
あなたと、美術展に行った。
あなたは、美術館が似合う。
まるで美術館のオーナーのように、淡々と楽しんでいる。
あまたと、5つ星ホテルに行く。
あなたは、5つ星ホテルが似合う。
ここでも、あなたは5つ星ホテルのオーナーのように見える。
ふんぞり返っているわけではない。
逆ね。
むしろ、いつも通り。
普通の人は、美術館に来ると、頑張ってしまう。
それが、違和感になる。
あなたは、いつも通り。
入る前と、入った後で、変わらない。
普通の人は、5つ星ホテルに入ると、気負ってしまう。
それが、浮いてしまう。
あなたは、普段と変わらない。
あなたは、道を歩いているときでも、まるで美術館の中にいるように、景色を眺めている。
あなたは、エレベーターを待っているときでも、5つ星ホテルの中にいるように、優雅にたたずんでいる。
普段のあなたが、美術館にいるように街を眺め、5つ星ホテルにいるように、たたずんでいるだけね。
有名な人の前でも、無名な人の前でも、同じように、敬意を持って接する。
落差がない。
愛し合う前と、愛し合った後も、同じように、優しい。
変わらないというのが、すごい。
家宝の茶器でも、100均のお茶碗でも、どちらも同じリスペクトとリラックスで、接している。
今は、愛し合った後、それとも前?
分からない。
そもそも、あなたに愛し合った後も、前もない。
後は、次の前だし。
する前から、したように、いとおしんでくれるので、前もない。
あなたの愛し方は、メビウスの輪。
今、ベッドにいるのか、美術館にいるのか、分からない私。