#540 鐘が、鳴り続けている
あなたの余韻が好き。
いつの間にか、眠ってしまっていた。
あなたの腕の中で、まどろむのが好き。
もったいないけど、眠ってしまうのも好き。
寝ていたいのに、ぼんやり目が覚めるのも、好き。
そのとき。
ボーン。
遠くで、お寺の鐘が鳴った気がした。
カーテンの隙間が、少しだけ、明るい。
時間的には、5時か、6時か。
7時には、まだなっていない。
夢の中だったのか。
しばらくして。
ゴーン。
さっきより、はっきり聞こえた。
あなたを、見た。
あなたは、奇麗な顔で眠っている。
やっぱり、夢ではなかった。
だいぶ離れたところに、お寺がある。
その鐘が鳴るのを、初めて聞いた。
耳を集中させて、次の音を待った。
鳴らない。
いくつ鳴るかも分からない。
最初に気づいた音が、いくつ目かも分からない。
もう、終わりかな。
そう思ったとき、ゴーン。
諦めかけたとき、鐘が鳴った。
さっきより、はっきり聞こえた。
それから、数え始めた。
いくつ目から聞いたか分からないけど、数え始めたのを1つ目として。
7つまで、数えた。
そのあとが、だんだん、聞こえにくくなった。
今、鳴ったか、鳴ってないかが、分からなくなった。
むしろ、等間隔で、幻聴が響いているかもしれなかった。
数えられなくなった。
鳴りやんでも、私の中で、鳴り続けいていた。
あなたの余韻のように。