#541 豊かな時間の中に
あなたの豊かな時間が好き。
あなたと一緒にいるときの、心地よさは、なんだろう。
贅沢(ぜいたく)。
そうじゃない。
物質的な贅沢じゃない。
もっと目に見えないもの。
この感覚は、何かで味わったことがある。
なんだろう。
そうだ。
音楽だ。
あなたから、緩やかな時間が流れている。
豊かな時間。
あなたといるときの心地よさは、あなたが醸し出す豊かな時間から生まれている。
こんなに忙しい人なのに。
あなたからは、緩やかな時間が流れている。
交響曲のように雄大で、優雅な時間。
あなたといると、豊かな時間に包まれる。
お香の煙が、緩やかに上っていくような。
あなたはいつも、緩やかな時間をプレゼントしてくれる。
私がふだん過ごしている時間軸とは、違う時間軸にあなたは生きている。
お寺の鐘の音の響きのように。
私が鐘の音で生きているとすれば、あなたは響きの中に、生きている。
楽譜の音符と音符の間の音。
お三味線の音が鳴っていない間。
演奏が始まる前の、楽譜にない休符。
大きなクジラが悠々と泳ぐような緩やかなうねり。
速いとか遅いとかの基準ではもはやない。
単位で計れない、あなたの時間。
ふだんの時間とは違う別の時間の流れの中に、あなたはこうして、私をいざなってくれる。