#551 どこかに行っている、あなた
あなたの空白の間が好き。
あなたが、何かを考えている。
その顔が、好き。
涼しい。
考えているといっても、苦悩しているわけでもない。
必死に何かを解決しようとしている顔でもない。
考えているんじゃないんだ。
何かを見ている感じ。
眺めている感じ。
近くのものじゃない。
遠くを眺めている感じ。
そうか。
あなたは、考えているんじゃないんだ。
遠くを、眺めているんだ。
今、私たちが、見えている何かではない。
そんなときは、話しかけない。
話しかけることができない。
あなたの話す、歴史の話が好き。
古代から、何千年もの話を、まるで見てきたかのように、話してくれる。
見てきたかのように、ではなくて、見てきているのね。
タイムマシンは、パラドックスが起こるから、存在しないという。
あなたは、タイムマシンで、遠い過去に飛んでいる。
パラドックスが起こらないのは、あなたが過去に、干渉しないから。
ただ、眺めている。
あなたが眺めていたのは、風景ではなくて、遠い過去の歴史。
タイムマシンに乗りながら、時代を移動していく。
あなたは、ここにいて、ここにいない。
あなたが、ほほ笑んだ。
楽しそう。
目を開いているのか、閉じているのか。
どちらでもない。
あなたは、過去だけではなく、未来にも、飛んでいる。
そんな、どこかに行っているあなたが好き。