#557 長い夜は、お得
あなたの長い夜が、好き。
急に、夜が早くなった。
早くなったというより、暗くなった。
同じ夜でも、暗く感じる。
真夜中かと思ったら、まだ夕方だったりする。
だんだん暗くなってくるはずなんだけど、まるでスイッチをオフにしたように、急に暗くなる気がする。
私は、この季節が好き。
「こんなに夜が早く来て、損した気がする」と、誰かが言った。
私は、逆。
夜が長くなるのが、うれしい。
あなたといる夜の時間が、楽しめるから。
きっと、一緒にいる時間は同じなんだろうけど。
それでも、長い夜を、一緒に過ごすのが好き。
あなたに会う前は、違った。
私も、「冬は、なんで夜が長いんだろう」と、こぼしていた。
「損した気がする」と言っていたのは、私だった。
白夜がある北欧の人は、ロマンチストにならざるをえない。
北欧には、妖精の物語が多い。
夜が長いせいに違いない。
昼と夜を作った神様は、天才だと思う。
白夜のある北欧も、昼ばかりではない。
夜があるから、太陽が沈まない夜に、神秘性が生まれる。
ドラキュラ伯爵が、夜目覚めるというのも、ロマンチックでいい。
ウルフマンも、満月の夜に現れて、ロマンチック。
夜は、人を、別人にする。
あなたは、夜は、ますます紳士になる。
闇の中でも、あなたのシルエットが、浮かび上がる。
あなたのシルエットに、吸い込まれる。
吸い込まれたくなっているのは、私のほう。
吸い込まれたふりで、あなたに飛び込んでいっている。
夜明けも遅いのが、神様の粋な計らい。
空が、混ぜる前のアイスカフェラテのように、水平線をミルク色にする。
おいしそうな夜明けを、あなたの腕の中で、味わう。