#561 さっきからいた、あなた
あなとの現れ方が好き。
あなたと、待ち合わせる。
「暖かい所に、いてね」
その一言が、優しい。
その一言で、温まる。
ワクワクして、ドキドキして、それでなくても、温かい。
外で、待っていると、あなたがコートで、くるんでくれる。
待ち合わせ場所も、面白い。
待ち合わせ場所に、早めに着く。
早く会いたくて、早めに来てしまった。
早めの電車の、さらに1本早い電車で、来てしまった。
まだ、30分、ある。
この時間が好き、
あなたを待つ時間は、特別な時間。
メールが入る。
「ニコニコしてるね」
バレていた。
ひょっとして。
あたりを、見渡した。
あなたは、いない。
「暖かい所にいてって、言ってるのに」
どうして、バレるんだろう。
もういちど、あたりを見渡した。
いない。
その時、ちらりと、壁の隙間から、スマホのライトが光った気がした。
小さな壁。
そこはよく、前を通っていた。
まさか。
壁の向こう側に回った。
うそでしょ。
壁の向こう側には、まさかのベンチがあった。
そして、あなたがニコニコして座っていた。
あなたが、席を動いて、私のスペースを作ってくれた。
あなたの体温で、ベンチが温められていた。