#566 あなたの背中に、乗って
あなたの背中が、好き。
よく知っているところでは、私を先に行かせてくれる。
知らないところでは、あなたが先に行ってくれる。
あなたの背中が、私を守ってくれている。
エレベーターに乗るときは、私を先に乗せてくれる。
私が後ろに倒れても、あなたが受け止めてくれる。
降りるときは、あなたが先に降りてくれる。
私がつまずいたら、あなたの背中が、受け止めてくれる。
わざと転びたくなった。
だめだめ。
ここは長いエスカレーターだから。
短いのでも、だめに決まっているでしょ。
でも、そんなことを想像させてしまうのが、あなたの背中。
大きくて、厚くて、柔らかい。
他の男の人は、胸筋を見せたがる。
その割には、背中が貧相なことに、気づいていない。
女性は、こっそり背中を見ている。
背中に、その人が出る。
あなたの背中は、力んでもいない。
リラックスしている。
そして、こんなに厚みを感じるのに、首がすっと伸びている。
そこが、王子。
あなたは、自分では、きっと気づいていない。
あなたの背中が、どんなにみんなと違うか。
背中は、まねができない。
スーツを着ていても、コートを着ていても、力強い。
ベッドの中でも、私は、あなたの背中に抱きつきたい。
背中から抱きついているのに、あなたが抱き締めてくれている感じがする。
鷲の背中に乗って、飛んでいる感じがする。
あなたの背中に抱きつきながら、私は、中学生になっていた。
自転車の後ろに、横座りに乗って、あなたの背中にしがみついている。
私は、赤ちゃんになった。
あなたの背中に、おんぶされている。
あなたが手のひらで、私の体にリズムを取ってくれている。