#572 仏像のような、背中に
あなたの背中が好き。
あなたと、美術館に行った。
仏像展。
お寺でも、拝見した。
違う場所で見ると、また一味違う。
お寺の中でも、素晴らしい。
美術館の中でも、素晴らしい。
違う味わいがある。
前に、お寺で見たときと、違う感覚だった。
お寺と違うところは、背中に回れること。
仏様の背中に回るなんて、いいのかなと、ドキドキする。
手を合わせながら、背中に回らせていただく。
ゴルゴ13になら、射殺されるところ。
前から見ても美しいけど、背中も美しい。
仏師は、見えない背中まで、渾身(こんしん)の気合で作り上げている。
見えないところだからこそ、手を抜かない職人魂。
見えないところをきちんとしているから、前にオーラが出る。
ふと、あなたの背中を見た。
いつもは、前から見ている。
あなたの背中も、仏師が渾身で彫ったかのように、すごみがあった。
他の人の背中と、全く違った。
前からも差が大きいけど、背中側のほうが、もっと差が大きいことに気づいた。
アスリートの背中だった。
アスリートの背中の写真ばかりを集めた写真展を見た。
そのときも、あなたの背中を、思い浮かべた。
その人の魅力は、背中に出る。
自分が、心配になった。
年齢は、背中に出る。
前は若作りしていても、背中は老いを隠せない。
自分で、気づけないから怖い。
いつの間にか、仏像の背中よりも、あなたの背中ばかり見ていた。