#573 風でも、感じてしまう
あなたの振動が好き。
春風が、吹いた。
目の前を歩いている、かわいい女の子が、スカートを押さえた。
私は、ドキリとした。
彼女のスカートが、まくれ上がるからではなかった。
私のスカートの心配でもなかった。
感じた。
さっきまで、あなたの腕の中にいた。
あなたの余韻が、残っていた。
あなたの余韻を、風が刺激した。
あなたと会ったあとは、風でも、いってしまう。
私は、待った。
次の風が来るのを。
地下鉄の入り口の中に入らないで、外にいた。
風は、そんなに都合よく吹いてくれない。
あっ。
感じた。
春風は、吹いていなかった。
どういうこと。
地下鉄の入り口から、電車が入ってくることで生まれる風だった。
そんなに突風ではない。
気づかない人は、気づかない。
それくらいのかすかな、風。
それにも、私の体は反応してしまう。
あなたは、そんな風にしてまった。
ホームに入った。
赤ちゃんが、ママに抱かれて、すやすや眠っていた。
今なら、赤ちゃんの寝息のくらいの柔らかさでも、感じてしまう。
電車が、入ってきた。
乗り込む。
乗ってから、気づいた。
この振動は、まずいでしょ。