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#575 ふわふわなのに、弾力がある

あなたの、ふわふわなのに弾力があるのが好き。
あなたと、美術館に行った。
日本画の新しい美術館。
若冲の<柳に鶏図>。
鶏が、真正面からこちらを見ている。
鶏を、こんなに真正面から見ることはない。
鶏に、にらまれている気がした。
さすが、鶏好き若冲。
首の回りの羽毛が、逆立っている。
激しい。
龍や虎や鷹よりも激しい、鶏。
背景は、柳。
ぼかした薄墨に、風を感じる。
これは、夜。
遠くにあるだけではなくて、月の光を反射している。
柔らかな柳の葉が、月の光を浴びながら、揺れている。
鶏の激しさと、柳の葉の優しさの対比。
熱々の焼きいもに、バニラアイスクリームを載せている感じ。
階段を下りると、大堰川と嵐山が見える大きな窓がある。
緊張した目を、休めてくれる。
水盤に、嵐山が映っている。
さっき美術館に入ったときと、また違う景色になっている。
展示室から戻る間のこの時間が好き。
さっき見た絵が、よみがえる。
<柳に鶏図>の激しさと優しさは、まさにあなた。
あなたの心地よさは、激しさと優しさが、一幅の中に、同居しているところにある。
ふわふわな腕枕の中に、弾力のある芯がある。
もう少し、この時間を味わっていたい。



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