#576 水を飲む、虎のように
あなたの腕の中で見る夢が好き。
あなたと、仮眠をする。
夕食までの仮眠。
これが、贅沢(ぜいたく)。
さっきまで、お寺の特別拝観に行っていた。
観光客が少ない冬が、京都は一番いい。
観光客が少ないだけでなく、特別拝観がある。
特別拝観は、観光客を呼ぶためではない。
観光客でない人に、見てもらうためにある。
特別拝観に行くと、どっと眠くなる。
どこかの世界で、冒険をしてくるから。
タイムスリップをして、エネルギーを消耗するから。
特別拝観に行ったあと、仮眠をして、夕食。
それが、贅沢コース。
あなたと一緒なら、スペシャルコース。
いっぱい、夢を見た。
特別拝観のあとは、いっぱい夢を見る。
頭の中で、大編集大会が行われている。
それも、楽しい。
変な夢を見る。
お寺の特別拝観なのに、シュルレアリスムになる。
あなたの腕の中で、うとうとしながら、夢を思い出す。
虎が出てきた。
さっき、見た虎。
水を飲む虎。
虎だったか、あなただったか。
水を飲む虎に、あなたを感じた。
夢は、無意識を映像にしてくれる。
あなたは、水を飲む虎。
あの屏風絵の前で、私は、セクシーを感じていた。
虎の筋肉に、あなたの筋肉を感じていた。
虎の毛並みに、あなたの体毛を感じていた。
虎に抱かれながら、私はもう一度、夢の中に入れてもらった。