#578 どこも当たらず、包み込まれる
あなたの背中の温かみが好き。
目が覚めた。
あなたの背中に、抱きついて眠っていた。
カーテンの外は、まだ暗い。
幸せ。
まだ、こうして、あなたに抱きついていることができる。
目が覚めたとき、ベッドのヘッドボードが目に入った。
私は、顎を上げて眠っていた。
いつもの癖。
ピラティスの先生にも、いつも注意されている。
あなたは、首の力が抜けている。
私は、うなじに力が入ったままなので、顎が持ち上げられている。
あなたの背中に、顎の先を当てていたに違いない。
反省。
喉が渇いているのは、口を開けて、口呼吸になっていたせいだ。
あなたが背中から私を抱きしめたまま眠っているときは、どこも当たらない。
全部が、触れている。
当たっているのではなく、触れている。
優しく、包み込むように。
あなたの顎が背中に当たるのを、感じた記憶はない。
それに比べると、私は、凸凹にあなたに当たっている。
凸凹どころか、ギザギザ。
あなたはきっと、心地よくないに違いない。
それすらも、あなたは受け入れてくれる。
首の後ろの力を抜いてごらん。
あなたが眠ったまま、教えてくれている気がする。
首の後ろの力を、抜いてみた。
気がつかないうちに、力が入っていたことに気づいた。
抜いてから初めて、力が入っていたことに気づいた。
鼻が、通った。
口を閉じることができた。
呼吸が、深くなった。
体中の力が、ほぐれていった。
あなたの背中が、すべての筋肉を、ほぐしてくれた。