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#595 ハミングで、変身させてくれる

あなたのハミングが、好き。
5つ星ホテルのレストラン。
私は少し、緊張していた。
本当は、かなり緊張していた。
高級レストランに連れて行ってもらっているうちに、気づいたことがある。
同じ高級にも、2通りある。
クールと、フレンドリー。
今日のレストランは、クール。
だから、緊張感が高まる。
あなたは、クールにもフレンドリーにも、対応する。
その場のトーンに溶け込む。
一瞬で、変身する。
入り口の手前で変身しているのが、分かる。
置いていかれる。
突き放されているわけではない。
深い海の水圧に耐え切れていない自分のせい。
食事は、おいしい。
まわりを味わう余裕はない。
あなたはといえば、クールさを味わっている。
スタイリッシュ。
スタッフは、外国人が多い。
日本人のスタッフも、香港人のように見える。
日本語で話しかけられていても、英語で話しかけられている気がする。
あなたには、英語で話しかけている。
あなたのメニューは、英語版だった。
あなたは、オックスフォードに留学していた香港出身の華僑の御曹司に変身している。
ハミングが聞こえてきた。
あなたが、聞こえるか聞こえないかという小さなボリュームで、ハミングしている。
このとき初めて、レストランにBGMが流れていることに気づいた。
急に流れ始めたのではなく、さっきから流れていた。
緊張のあまり、BGMを聞くことができないでいた。
聞いたことがある曲だった。
カーペンターズ。
I Need to Be in Love
あなたのハミングで、私はリラックスできた。



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