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#602 人の顔を、覚えられない

あなたの、顔を覚えないところが好き。
あなたは人の顔を覚えない。
覚えることができなのか、覚えようとしていないのか分からない。
こんなになんでも覚えてる人が、面白い。
美人でも、覚えない。
美人があなたに挨拶した。
「初めまして」と、あなたが挨拶した。
「初めてじゃないんですけど」
「ああ、二度目でしたね」
「二度目でも、ないんですけど」
その人はむっとするというより、もはや、あきれている。
だから、最近あなたは「初めまして」を言わなくなった。
あなたは、好き嫌いが激しい。
嫌いなものを覚えないのではない。
好きでないものは覚えないだけだ。
嫌いなものは覚えているのかな。
やっぱり、嫌いなものも覚えていない。
あなたのスルーの仕方は半端じゃない。
もはやスルーしている意識すらもない。
全く脳の中から消去されている。
好きなことを覚えるために、好きではないことでワーキング・メモリーを使うのなんて、もったいないという感じ。
だから、あなたには、ストレスがない。
あなたのスルーを見てると、これがほんとのスルーだなと感じる。
それに比べれば、私のスルーは、まだ必死でスルーしようとしている。
あなたが、これほどのスルー力を身に着けたのは、それだけ嫌なことを体験してきたからに違いない。
スルーすることで、ギリギリ正気を保っているのだろう。
「あれ、誰?」
と、ときどき、あなたが私に聞く。
何度も会っている人だった。
あなたが私にその人の名前を聞くのも、五回目だった。
ほら、また間違った名前で呼んでいる。



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