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#604 開かずの窓を、開けて

あなたの窓の開け方が好き。
私は、掃除当番が好きだった。
優等生ぶってるわけではないけれど。
特に、隅っこを掃除するのが好きだった。
一番好きだったのは、窓のレールの掃除だった。
グラウンドの砂や埃(ほこり)が、たまっていた。
それを奇麗に掃除するのが、好きだった。
窓のレールを掃除すると、自分がシャワーを浴びたような爽やかな気持ちになった。
戦争の前から続く古い学校だった。
何かの指定になって、保存されている校舎だった。
1か所だけ、開かない窓があった。
いろんな方法を試してみたけど、窓は開かなかった。
ネットで調べて、さび取りスプレーも自分で買って試してみたけど、やっぱり開かなかった。
仲良しの友達にすら「なんで、そんなことしてるの?」と、理解してもらえなかった。
さびてくっついてしまっているのなら、仕方ないかな。
でも、私は想像した。
この1か所の窓は、いつから開かなくなったのだろう。
最初は、開いていたはず。
いつかしら固くなり、固いから開けなくなり、開けないから開かなくなっていった。
私の前にも、開けようとして人がいたかもしれない。
夜、「あっ、こうしたら開けることができるかもしれない」と思いついて、目が覚めた。
次の日、学校へ行って、早く試してみたくなった。
試してみると、やっぱり開かなかった。
図書館で、窓に関する本も、たくさん読んだ。
窓について、かなり詳しくなった。
あるとき、夢を見た。
諦めていた窓が軽々と開いた。
レースのカーテンを揺らして、風が通り抜けた。
風は、私の心の中まで、通り抜けた。
これは、私の心の窓だったのね。
私の中を通り抜ける風が、心地良かった。
きっと、これは夢だなと、感じていた。
あなたに出会って、夢がかなった。



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