#614 高校生のあなたと
あなたと、高校生が主人公の映画を見るのが好き。
あなたと映画を見る。
主人公は高校生のカップル。
たわいない淡い恋。
すごい事件が起こるわけでもない。
奇跡が起こるわけでもない。
魔法も逆転も、ない。
ちょっと切ない。
大人のあなたに、こんな映画で大丈夫かと心配になった。
誘った私が責任を感じた。
想像していた展開は大人の物語だった。
好きな大人の俳優さんが出ていたので、見た。
その人は少しだけ出て、ほとんどが高校生の物語だった。
なのに。
あなたは完全に映画の世界に入っていた。
高校生のように感情移入しているのが分かった。
スクリーンを見るあなたの横顔は高校生そのものだった。
映画館の中は女子高生だらけだった。
その中に交じって、あなたは高校生よりも高校生だった。
ハラハラしていた。
切なく感じていた。
ひょっとして涙目になっているかな。
あなたは、主人公が高校生でも動物でも物でも、ありとあらゆるものに感情移入する。
もはや男子高校生ですらない。
男子と女子の両方の高校生になっている。
切ない状況に、二人分、切ながっている。
親目線でもない。
こういうことって高校生の頃あったよねという回想でもない。
あなたは、今まさに高校生になっている。
あなたに、タイムマシンは要らない。
映画があれば、あなたは何歳にでも変身できる。
このあと高校生のあなたとデートすることができることに、私はちょっとドキドキしている。