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#620 15分、寝ていい?

あなたの仮眠が好き。
「15分、寝ていい?」
あなたが言った。
そう言って、あなたは目を閉じた。
ソファーで目を閉じた。
座ったまま。
両腕を、胸の前でクロスした。
深い深呼吸を、ひとつした。
次の瞬間には、あなたは眠りに入っていた。
深呼吸1回で眠りに入れるあなたが好き。
あなたは早朝から起きていた。
一日中、走り回っていた。
あなたの脳はヘトヘトのはず。
すぐ眠りに入れるのは眠いからではない。
交感神経と副交感神経の切り替えを自在に操れるから。
プロのスパイのテクニック。
あなたの寝顔が優しい。
自分はこんなに優しい寝顔でいられるか、自信がなかった。
たぶん私は眠っているとき、眉間にしわが寄っているに違いない。
呼吸が深い。
あなたの脳のコンピューターが整理されていっているのが分かる。
あなたと、初めて会った時も、あっていきなりあなたは、
「15分、寝ていい?」
と、言った。
会っていきなり、そんなことを言う人は初めてだった。
そのまま熟睡した人も初めてだった。
私は、うれしかった。
信頼されている感じがした。
選ばれた感じだった。
「ああ、よく寝た」
あなたが目を覚ました。
時計を、見た。
14分。
あなたは15分よりも先に目を覚ました。
爽やかに、ほほ笑んだ。
仮眠のあとの、あなたのほほ笑みが好き。



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