#624 私の、満足
あなたのウロウロ散歩が好き。
あなたと郊外の美術館に行った。
その前に面白そうなお店を見つける。
入る。
こんなのを初めて見た。
今まで、こんなのがあるのを知らなかった。
お店の入り口にパンフが置かれている。
あなたはパンフを見逃さない。
「これ、面白そうじゃない?」
見ると、近い。
そうなると、行くしかない。
行ってみる。
やっぱり、面白い。
そのお店で、ポスターを見つける。
仏像展。
これは行くしかない。
面白がっている。
あなたにとって、国宝も重要文化財も何もないものも全く区別がない。
自分にとって、面白いかどうか。
自分にとっての、国宝。
「これは、パットラインを真剣に読むキャディーさん。気合い、入ってるなあ」
そう言われると、そうとしか見えなくなる。
手に持つ錫杖(しゃくじょう)がゴルフクラブに見え、遠くを見つめる目が芝目を読んでいる。
仏像は、その美術館のイチオシとは限らない。
たいてい、パンフレットにも載っていない。
そういう仏像を見つけるのが、あなたはうまい。
「あっ。ここにも」
また、あなたは、見つけた。
匂いを嗅いで回るワンちゃんの散歩をしている楽しさがある。
そして、お目当ての美術館に。
シャッターが下りている。
閉館時間を、5分過ぎていた。
こういうときも、あなたは満足そう。
「また、来ようね」
そのひと言で、私は満足。