#239 アイコンタクトで、お話しして
あなたのアイコンタクトが、好き。
お昼時のカフェ。
あなたは、いつも決まった時間に、現れる。
ソイラテ・グランデ・スリーブ付き。
お店には、いろんな人が現れる。
表参道のカフェには、カッコいい人が多い。
外国人の人も、多い。
最初、あなたを見た時、外国人かと思った。
誰もが、待っている間、スマホを見ている。
あなたは、本を読んでいる。
あなたを外国人かなと思った理由は、姿勢の良さだけではない。
目線を返してくれるところ。
店長からは、お客様に、アイコンタクトをするように習っている。
できるだけ、お客様にアイコンタクトするようにしている。
最初は照れくさかったけど、だんだん慣れてきた。
せっかくアイコンタクトしているのに、お客様のほうが、目線をはずしてしまう。
あなたは、違った。
私より先に、私にアイコンコンタクトを送ってくれた。
じろりと見るのではなく、優しく包み込むように。
私は、あなたにアイコンタクトを、返した。
すると、あなたは私が返したアイコンタクトを、また受け取ってくれた。
あなたの目に、吸い込まれた。
今、アイコンタクトを私は返しているのではなくて、そらせなくなっているだけ。
味わってしまっている。
いけない、仕事をしなければ。
今、どれくらいの時間がたったのか、わからない。
1時間といわれれば、そんな気もする。
赤いランプの下で、お待ちください。
ちらりと、あなたを見た。
あなたは、微笑んで、アイコンタクトを返してくれた。
ソイラテ・グランデ・スリーブ付きを持って、あなたがお店を出ていく。
出ていくあなたを、ちらりと見た。
また、あなたは、アイコンタクトを返してくれた。
ひと言も交わしていないのに、いっぱいお話をした恍惚感に浸っていた。