#247 ぎりぎりの余裕で
あなたの、時間ぎりぎりの時の余裕が、好き。
時計を、見た。
もう、出かける時間。
あと5分しかない。
私も、あなたも、スーツはもう着ている。
「今度、この続きをしてね」
とあなたを、振り返った。
あなたは、もうベッドの中に入っていた。
「おいで」
と、あなたは微笑んで、布団をめくった。
さっきまで、あんなにきちんとスーツを着ていたのに、全裸になっている。
いつのまに。
椅子の上に、あなたのスーツが置かれている。
しかも、乱雑にではなく、しわひとつ入らないように。
まるで、バトラーが置いたように。
あなたは、私が振り返る1秒の間に、スーツを脱いで、ベッドの中にいた。
私も、1秒で脱いで、あなたの腕の中に、飛び込んだ。
あなたと出会ってから、得意になったことが3つある。
1秒で、全裸になって、ベッドに飛び込めること。
時計を、見た。
あと、4分50秒。
あなたは、「4分50秒もあるよ」という顔で、ジェントルなキスをしてくれる。
このキスは、3時間コースのキス。
あなたは、4分50秒しかないからと、4分50秒のキスでごまかさない。
4分の間に、3時間コースのように、何度もいった。
それが、2つ目の特技。
あと1分しかないよ。
それでも、あなたは、ゆったりと腕枕をしてくれた。
これから、出かけることを忘れてしまいそうになるくらい。
残り20秒。
スーツに着替えて、部屋を出た。
5秒前。
15秒でスーツを着れるようになったこと。
これが、3つ目の特技。
「まだ、5秒も、あるよ」
あなたは、5秒間、長い長いキスをしてくれている。