※左から「響 ~小説家になる方法~」担当編集者の待永倫氏と、「ゴールデンカムイ」担当編集者の大熊八甲氏
マンガ大賞2017が本日3月28日に発表され、柳本光晴「響 ~小説家になる方法~」が大賞を受賞。その授賞式が同じく本日、ニッポン放送イマジンスタジオにて行われた。
今年で10回目を迎えるマンガ大賞。授賞式ではまず初めに、司会であり実行委員を務める吉田尚記アナウンサーから感謝の言葉が述べられた。また昨年「ゴールデンカムイ」で大賞を獲得した野田サトルの担当編集・大熊八甲氏が壇上に登場し、大熊氏は「この1年間、おかげさまでものすごく忙しくさせていただきました。読者の方を増やしていただけた1年でした」と、野田からのコメントを代弁した。その後、マンガ大賞2017のプレゼンターも務めた大熊氏から本年度の大賞を発表され、大賞の「響 ~小説家になる方法~」作者、柳本と同作の担当編集者・待永倫氏がステージに迎え入れられた。
柳本は第一声に「とにかくうれしい。ようやく『本当だったんだ』と感じた」と喜びのコメント。大賞受賞の連絡は、仕事の作業中に待永氏からの電話で知ったと言い、「電話を切ってアシスタントと『やった!』とハイタッチをして。そしたらアシスタントの子が『先生、マンガは絵じゃないってことが証明されましたね!』と名言を残したんです」と振り返り、会場を笑わせた。
壇上では、本作の連載を行っている出版社とデビュー時の出版社と違っていることや前担当からのくどきでビッグコミックスペリオール(小学館)にて連載を行うことが決まったなどのエピソードが明かされた。
※受賞記念のプライズと柳本光晴による受賞記念イラスト
本作で小説家をテーマに選んだ理由は、題材を選ぶ際に「野球やサッカーなどのメジャーな題材は相当な勉強が必要だし、好きじゃないとできない」と考え、「マンガではあまり扱われていない題材を考えたときに小説文芸があって。やっぱり文章は絵に起こせないので、みんな手を付けていないんだろうなと。ただそのときに、キャラクターさえ活かせれば成立するのではないかと思った」など、執筆当時の構想を語った。
同作で「圧倒的な天才を描きたかった」という柳本だが、主人公の天才少女・鮎喰(あくい)響がどうやって生まれたのかという問いには、「自分ではあまり思ってないんですけど、『柳本さんと響が似てる』と言われるので、自分の中に(響に似てる部分が)あるんだと思うんです」と説明。また、「自分ではそんなに強烈な子を描いてるつもりはなくて、むしろかわいい子を描いている」つもりであることを明かした。
「実際に芥川賞・直木賞の取材に行ったことはあるか」という質問には、「作画資料用に写真を撮りたいなと思いまして、芥川賞・直木賞の記者会見の日に帝国ホテルに行ったんです」とエピソードを披露。しかし「行ってから気付いたんですけど、『記者会見場はこちらです』みたいな案内があるわけではなくて。来たはいいけど、どうしていいかわからなくて帰ってきました。だから取材はしてないです。担当編集にも相談せずに行ったので、勝手にふらっと来た人っていう感じでした」と失敗談を語ると、「先生、“響感”ハンパないですね!」と吉田アナを驚かせた。
「マンガ大賞にはどのような印象を持っているか」という質問には、「マンガ大賞の大賞取ったら(大相撲のような)パレードをしたいよね。」という話をアシスタントとしたエピソードを明かし、「パレードが行われるには賞の評価の歴史も必要なので、パレードが実現できるほど長く続いて欲しい」と述べた。
また同作の2代目の担当となる待永氏は、初代担当からどのような引き継ぎがあったかと問われ、「前担当と編集長からは『いつか必ずヒットする作品なので大事にするように』と言われ、プレッシャーを感じていました」と述懐。そして「(柳本は)『響みたいな方』だと伺っていました」と、ここでも柳本の“響感”を明らかにした。また柳本がマンガの執筆を非常に熱心であることや読書としても多くの作品を読んでいるなどのエピソードが明かされた。また、待永氏は「柳本さんの中にあるものを引き出すこと」が自分の役目と述べた。柳本の「マンガは絵じゃない」という発言にも触れ、「面白いマンガ、面白い絵が一番。我々にとって、柳本さんの絵は最高の絵」と評した。
※授賞式の様子
『響~小説家になる方法~』は15歳の天才少女・鮎喰響が、圧倒的才能をもって文芸界で認められいく様を描いていく物語で、ビッグコミックスペリオール(小学館)にて連載されいる。現在、単行本で5巻まで刊行されている。なお柳本は、本日24時よりニッポン放送にて放送され、吉田アナが進行を担当しているラジオ「ミュ~コミ+プラス」に出演する予定となっている。