第155回芥川龍之介賞と直木三十五賞が2016年7月19日(火)、発表された。芥川賞は村田沙耶香(むらた・さやか)さんの「コンビニ人間」(文學界6月号)、直木賞は荻原浩(おぎわら・ひろし)さんの「海の見える理髪店」(集英社)が受賞した。
芥川賞・直木賞は1935(昭和10)年に制定。芥川賞は新聞・雑誌(同人雑誌を含む)に発表された純文学短編作品、直木賞は新聞・雑誌(同)・単行本として発表された短編および長編の大衆文芸作品の中から優れた作品に贈られる。前者は主に無名・新進作家、後者は無名・新進・中堅作家が対象となる。
前回(第154回)の芥川賞は滝口悠生氏『死んでいない者』と本谷有希子氏『異類婚姻譚』の2作、直木賞は青山文平氏の『つまをめとらば』が受賞した。
■第155回芥川龍之介賞
『コンビニ人間』
〈著者プロフィール〉
1979年8月14日生まれ。千葉県印西市出身。玉川大学文学部芸術文化コース卒。2003年「授乳」で第46回群像新人文学賞優秀作を受賞してデビュー。
<書籍概要>
第155回(2016年上半期)芥川賞受賞作
36歳未婚女性、古倉恵子。
大学卒業後も就職せず、コンビニのバイトは18年目。
これまで彼氏なし。
オープン当初からスマイルマート日色駅前店で働き続け、
変わりゆくメンバーを見送りながら、店長は8人目だ。
日々食べるのはコンビニ食、夢の中でもコンビニのレジを打ち、
清潔なコンビニの風景と「いらっしゃいませ!」の掛け声が、
毎日の安らかな眠りをもたらしてくれる。
仕事も家庭もある同窓生たちからどんなに不思議がられても、
完璧なマニュアルの存在するコンビニこそが、
私を世界の正常な「部品」にしてくれる――。
ある日、婚活目的の新入り男性、白羽がやってきて、
そんなコンビニ的生き方は
「恥ずかしくないのか」とつきつけられるが……。
現代の実存を問い、
正常と異常の境目がゆらぐ衝撃のリアリズム小説。
■第155回直木三十五賞
『海の見える理髪店』
〈著者プロフィール〉
1956年6月30日埼玉県生まれ。成城大学経済学部卒業。広告制作会社勤務、フリーのコピーライターを経て97年「オロロ畑でつかまえて」で第10回小説すばる新人賞を受賞しデビュー。
<書籍概要>
主の腕に惚れた大物俳優や政財界の名士が通いつめた伝説の床屋。ある事情からその店に最初で最後の予約を入れた僕と店主との特別な時間が始まる「海の見える理髪店」。意識を押しつける画家の母から必死に逃れて16年。理由あって懐かしい町に帰った私と母との思いもよらない再会を描く「いつか来た道」。仕事ばかりの夫と口うるさい義母に反発。子連れで実家に帰った祥子のもとに、その晩から不思議なメールが届き始める「遠くから来た手紙」。親の離婚で母の実家に連れられてきた茜は、家出をして海を目指す「空は今日もスカイ」。父の形見を修理するために足を運んだ時計屋で、忘れていた父との思い出の断片が次々によみがえる「時のない時計」。数年前に中学生の娘が急逝。悲嘆に暮れる日々を過ごしてきた夫婦が娘に代わり、成人式に替え玉出席しようと奮闘する「成人式」。伝えられなかった言葉。忘れられない後悔。もしも「あの時」に戻ることができたら……。誰の人生にも必ず訪れる、喪失の悲しみとその先に灯る小さな光が胸に染みる家族小説集。