「バルス!!」。
テレビで『天空の城ラピュタ』が放映されている時に、SNSでみられる「バルス祭り」の光景です。本書によると、『天空の城ラピュタ』の主人公・パズーとヒロイン・シータが滅びの呪文を唱えている瞬間、Twitterでは5万5000もの「バルス!!」が飛び交ったそうです。『天空の城ラピュタ』はまさに国民的映画として多くの人に愛されています。
著者はスタジオジブリの記念碑的作品である『天空の城ラピュタ』に制作進行として参加します。本書によると当時、宮崎駿監督の口癖は「木原君、この作品は失敗できないんです」だったそうです。それほど、スタジオジブリとしての第一作目となる『天空の城ラピュタ』は宮崎駿監督だけでなく、スタジオジブリとしても失敗できない作品だったのです。そのプレッシャーのなかで、当時20代の著者が体験したすべてが本書には詰まっていると感じました。
本書は、当時の過酷な舞台裏を回想し「あの時はつらかった、でもやりきった」というような内容ではありません。著者は、本書を通じて『天空の城ラピュタ』に奥行きと深さを与えています。キャラクターの立ち居振る舞いや舞台装置、空間演出に隠された意図を当時の様子を回想しながら書いています。宮崎駿監督を憧れて、同じ作品に関わった著者がみつめた宮崎駿監督のエピソードは読み応えがあります。
『天空の城ラピュタ』の商業的成功がなければ、スタジオジブリは存続しておらず、『となりのトトロ』や『千と千尋の神隠し』が世に出ることはなかったのではないかと思います。
本書の読後、これまでと違った『天空の城ラピュタ』と宮崎駿監督の人間像が見えてくるのではないかと思います。