「このマンガがすごい!2017年」のオンナ編の第1位にも選ばれたこの作品は、漫画の中に絵本の世界が広がっている作品で、1巻完結となっています。
商業で栄えて国力豊かなA国と、万緑の中にあって水の尽きぬB国は、つまらないことでいがみ合っている内に犬のうんこの片付けで戦争に突入してしまいます。戦争の止まない2つの国を見かねた神様の助言で、この物語はスタートする。
神様の助言に従って、それぞれ相手国から伴侶を贈られるはずだったA国の姫・サーラと、B国の学者の息子・ナランバヤルでしたが、ふとした巡り合わせで出会ってしまいます。
ぽっちゃりでおっとりしているサーラと、歯に衣着せぬ物言いだけど根は素直なナランバヤルの2人はいつしか惹かれ合い、お互いへの想いを育み、そして対立する両国の行末を案じて、A国とB国の友好のためにそれぞれ行動していくというものです。
昔の絵本やおとぎ話のような舞台とキャラクターが採用されており、ディズニー映画でありがちな悪役というのも存在しません。
ここまで読むとファンタスティックな物語なのかなと思いますが、実際は2人の主人公の恋愛模様を軸にA国とB国の社会や政治的な闘争が描かれており、俗世に生きる私達も考えさせれることが多々あります。
画はオーバーリアクションなものはありませんが、そのことによって随所で発せられる台詞が心にまで届き、各キャラクターの感情表現が際立つものとなっています。また、キャラクターの感情表現だけでなく、背景や衣装なども繊細に書き込んであり、少女漫画王道のピュアなラブロマンスや絵本のようなファンタジーが好きな人には、オススメです。
大人になるとどうしても仕事のストレスなどで優しい気持ちというものを忘れがちですが、この作品を読むと昔おとぎ話で読んだ時のような童心を思い出せます。純粋でピュアな作品だからこそ、是非、一度手にとって「ピュアな心」を思い出して欲しい一冊です。
(文:編集部S)