まず、漫画家を目指す漫画や出版社の漫画の編集部を漫画をした作品は多いし、逆に小説家や漫画以外の編集部を舞台にした作品は小説に多い。
が、今作は小説家を目指す主人公を描いた「漫画」なのである。
いわゆる、「お仕事」漫画と言われるジャンルで主人公が小説家を目指すというのがテーマ。
なので、副題に「小説家になる方法」とあるが漫画で小説家になる方法を解説してくれているわけではない!ただし、響という主人公が小説家を目指していくのだからあながち間違いではない。(続刊以降で小説家にデビューするのだが……)
主人公である女子高生・鮎喰響は文芸雑誌の新人賞に応募条件を満たさない形で小説を送り、ゴミ箱に捨てられる。しかし、偶然その原稿を読んだ編集者・花井は文芸に革命が起こせると確信し世に出したいと思い、住所も年齢も電話番号も記載されていない著者を捜し出そうと決める。一方で投稿者の響は自分の才能に気づかず高校で文芸部に入部しアクロバティックな日々を過していた。
と簡単なあらすじにはなるが、今作のポイントは「響」という天才作家を前にした時に周りの人がどうなっていくのかということだろう。そして、その周りの人からみた「響」の快進撃の物語である。
しかし、この響は天才にありがちな(?)ネジ何本もぶっ飛んでるタイプで、他人の目は気にしないし、空気も読まなずに思ったことをズケズケというタイプ。さらにはヤンキーに囲まれても物怖じせずにボールペンを刺そうとするし、それどころか胸ぐらを掴まれれれば、相手の小指を折ってしまう。
この天才か奇人・変人の紙一重が作る「自分の世界」と「現実の世界」のギャップこそが、この作品の面白さであり、響という天才を際立たせている。
響の作品がどういった作品かというのは作中に出てこないのだが、原稿を送った先の文芸編集部員達の表情や言葉から如何に凄いかはわかる。
また、「純文学とは何か?」といった本好きなら一度は感じたことはあるが回答のない問いも出てくる。この当たりは、小説家をテーマにした作品ならではと言えるだろう。
響と編集部の花井はどう交わって行くのか。また、ギャル姿だが文芸部部長を務め、血筋的にも何か隠しているリカの存在と続刊が気になるのは間違いなし。
「文学」なんてダサいと思っていた方は、多分、考え方が変わると思います。
そして、本当に小説家を目指しる方は、小説家になる方法は書いていませんので、ご注意を。
(文:編集部S)