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神戸在住

神戸在住

著者 ページ数 クチコミ評判
木村紺 162ページ ★★★★★

『1・17』毎年、この日になると読み返す漫画があります。
それは、関東から神戸で大学生活を送ることになった女子大学生、辰木桂の目を通して描かれるエッセイ風の漫画、『神戸在住』です。

スクリーントーンを使わないどこか温かみのある独特の作風で、大きな事件があるわけでもない日常の中にあふれる機微が、優しいタッチで描かれています。

兵庫県出身の私が、初めてこの作品を読んだのは中学生のころ。その時は神戸に行ったこともあまりなく、「へー神戸ってこんなとこやねんなぁ」とか、「ここ知っとー!」とかそんな神戸への憧れの気持ちをもって読んでいました。

その後、中学、高校を卒業し、神戸の大学に通うことになり、神戸は自分が過ごす街となりました。漫画で見た風景との重なりに感動を覚えました。

そして神戸で働くことになり、いつしか、主人公を温かく、時には厳しく迎える街の人の目線で読むようになります。

関東出身の大学生の目を通して描かれる神戸の街、人。
読むたびに、新たな発見があり、そのたびに神戸という街がよりいっそう好きになります。

阪神・淡路大震災についての描写ももちろんあります。震災当時の様子もしっかりと描かれているのですが、それ以上に日常シーンでふとした瞬間に、震災の傷痕が見え隠れするシーンにドキッとさせられます。
このあたりは、震災だけをピックアップした物語にはなかなか出せないものかと思います。
ぜひ震災を知らない方にも読んで頂きたいところです。

色々な関わりの中で読み続けてきただけに、ひとしきり思い入れも深い作品です。

そして神戸から離れた今、また別の感慨をもって読みふけってしまうのです。
神戸という街の魅力が凝縮されています。神戸在住の方も、そうでない方にもオススメの一冊です。

(文:編集部T)



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