とある時計屋、『美谷時計店』を舞台に紡がれるミステリ作品。
美谷時計店には、「時計修理承ります」という貼り紙み紛れて、「アリバイ崩し承ります」という貼り紙があります。
若き女店主、美谷時乃いわく、時計屋は時間のプロフェッショナルであるから、時間に関する相談は解決できて然るべきである、とのこと。
そんな一風変わった経営方針を掲げる店に、一人の悩める新米刑事が訪れるところから、物語は始まります。
丁寧な文章と個性的な登場人物を追いながら、時間のロジックによる『アリバイ崩し』をこれでもかと突き詰めた、本格ミステリ大賞受賞作家による話題作です。
容疑者はあらかじめ提示され、物証と証言も話の序盤で羅列されます。
店主が「アリバイは崩れました」と言った時、それは物語を読む私たちが、事件を解決するための情報を全て手にしていることを示しているのです。
新たな方向性のミステリに、ついつい夢中になることは必至。
パズルを解いているような感覚と、それを自分で解いた時の爽快感は、ページを捲る手を止めてくれません。
新たな安楽椅子探偵の誕生を、是非その目で目撃してください。
短編全7話から成るこの作品。あなたは幾つのアリバイを崩せるでしょうか?