多彩な文体と世界観で、多くの読者を魅了する直木賞作家による時代小説の新境地。
幕末期の日本を舞台に、凄腕の殺し屋『夜汐』を巡る重厚なヒューマンドラマが繰り広げられます。
生と死が紙一重の環境で生活を送る登場人物たちは、それぞれが貪欲に生きようとしており、様式美から一線を画した姿は時に美しさすら感じさせます。
『死』の権化でもある夜汐と如何にして向き合うのか。
登場人物の抱く覚悟と、苦悩の果てに抱いた自身の生きる意味が、物語の結末が示す意味を大きく変貌させます。
あの時代、命は今よりずっと軽く扱われていましたが、生きることは今よりずっと重い意味を持っていました。
現代に生きる人々に対して、死んでいく意味と生きる目的を鋭く問い掛ける作品です。
新撰組が好きな方ならニヤリとしてしまう場面も多く、同時に普段時代小説を読まない方にも自信をもってオススメ出来ます。
最後のページを読み終えた時、きっとあなたは自分の心に住まう夜汐に気付くことでしょう。
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