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天才【電子書籍】

天才【電子書籍】

著者 ページ数 クチコミ評判
石原慎太郎 226ページ ★★★★☆

あの石原慎太郎が描く田中角栄の人生

85万部の大ヒットを記録した石原慎太郎の『天才』。田中角栄の金権主義を真っ向から批判していたはずの石原慎太郎が筆を尽くした、2016年上半期のベストセラーです。

政界において圧倒的な存在感を放ち、その決断力とカリスマ性で戦後の政治を引っ張ってきた田中角栄。しかし、幼少期の彼は「どもり」というコンプレックスを抱えた内気な少年であった。奔放な父親のせいで貧しい家庭に育った角栄は、その成長の過程で彼の政治人生の核となる思考を築いていく。
世の中で大切なのは根回しをすること。この世を統べているのは、役人たちが作った縦の仕組みであり、それを生き抜くには時には金も必要であるということ。
故郷を離れ東京で身を立てた角栄は、やがてふとしたきっかけから政治の世界に身を置くことになる。周りの役人たちとは違う貧しい出自をも盾に、角栄は得意の根回しと人を惹きつける魅力によって、高等小学校卒という異例の学歴でありながらさまざまな改革に取り組んでいく。そして『日本列島改造論』をうたい、一国のトップである内閣総理大臣に就任を遂げる。
日中国交正常化の実現、数々の議員立法の成立など戦後の日本を牽引していく角栄は、「庶民宰相」、「今太閤」などと呼ばれ、もてはやされた。ところが金権体質が度を過ぎた彼は、多額の賄賂を受け取ったとして、かのロッキード事件によって罪を問われることになる。
表舞台からは離れても、そのリーダーシップを使って「闇将軍」として政界に君臨した田中角栄の類まれなる姿は、天才と称するにふさわしいものであった。
かつては反田中派としてその体制に弓を向けた石原慎太郎が、なぜ今田中角栄の人生を綴ることになったのか。糾弾しながらも、その内面では強烈な存在感に惹かれずにはいられなかったのか。石原慎太郎によって露わになる昭和の天才の姿が、いまここに。

<みんなの感想>

◆石原慎太郎が語る田中角栄に惹かれて…

田中角栄の金権政治に真っ向から対していた石原慎太郎が、まさか仇敵について書くとは。どういう心境の変化なのかと興味をそそられて、早速読んでみた。
あとがきで語っているように、つまりは、石原慎太郎も田中角栄という一人の人間に魅せられていたということらしい。人の心を掴むうまさは、現在の政治家たちにも見習ってもらいたいものだ。
しかし、このような生き方を見ていると、政治家が清廉潔白である必要はあるのだろうかと疑問に思ったりする。多少の汚さがなければ、あの永田町の魑魅魍魎たちを手なずけることはむずかしいのではないだろうか。クリーンさを求めるばかりに結果なにも成し遂げられないことは正しいのだろうか。
今こそ昭和のダークヒーローに学ぶべき時なのかもしれない。

◆近代史の勉強

歴史の授業で近代の政治について学んだのですが、その時に田中角栄という人に興味を持って、この作品を購入しました。
教科書には載っている人物が作中にはたくさん登場して、さらには今も政治家として名前を聞く人物まで登場するので、「おぉ…」と不思議な気分で読みました。
それにしても、今では考えられないくらい豪傑な人だったのだな、とびっくりしました。金と政治といういかにもという体制や、愛人(それも2人も!)とその子供の存在など。
きっと現代だったら総理大臣として活躍する前に、週刊誌の格好のターゲットにされて、SNSとかで集中砲火を浴びていたんじゃないでしょうか。
数々の偉業も成し遂げられなかったかも?そういう意味で、昭和という時代だからこそ、活躍できた人なのかもしれませんね。



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