Appleを作ったのは2人のスティーブだった!
原作・松永肇一、漫画・うめ(小沢高広&妹尾朝子)のタッグが放つ2人のスティーブの物語。今作はもともと、iPhoneアプリ用の漫画として誕生したものの、リアリティがありすぎてAppleからNGが出たという逸話があります。
1984年1月24日、舞台上ではひとりの男が雄弁に語っていた。
その男はMac・iPod・iPhone・iPadなどを発表し、世界に驚きを与えてきたApple社の創始者スティーブ・ジョブズその人であった。もはや語る必要すらないほど有名な人物であるが、Apple社が世界的企業にまで成長したのは、もうひとりのスティーブ――スティーブ・ウォズニアックの存在があったからだ。
2人が起業した1975年当時、パソコンというのはバラバラのパーツを組み立てて作る、いわばマニアのための機械だった。ジョブズはそれを、誰にでも使える完成品として提供したいと考えていた。そして、相棒であるウォズニアックの才能があれば、当時の常識を打ち破るような“革命”が起こせる――と。
パソコンの設計と開発はウォズニアックが、必要な部品や資金を集めてマーケティングを行う役割をジョブズが担った。技術の天才ウォズニアックに対し、ジョブズは傍目からはただの凡人であると思われていた。
しかし彼には、『現実歪曲フィールド』と称される人並み外れたプレゼンテーション能力があったのだ。ジョブズの言葉は、聞く者に風を吹き込んだ。夢を見させた。この男なら、リスクを負ってでも賭けてもいいと思わせた。
ウォズニアックだけでは、パソコンを作ることはできても普及させることはできなかった。ジョブズだけでは、ただのビックマウスの向こう見ずな若者の夢で終わってしまっただろう。2人のスティーブが揃わなければ、今のApple社はもちろん、このIT時代は誕生していなかった。
シリコンバレーで芽吹いた種は、やがて大きく育ち、世界に驚きの実をもたらすことになる。IT時代の幕開けを呼び込む革命は、2人にとって終生のライバルをも巻き込んでいく…。
<みんなの感想>
◆スティーブズって?
アップル社といえば、スティーブ・ジョブズという程度の知識しかなかった私にとって、このスティーブズという作品は驚きでした。
Macなどを作ったもうひとりのスティーブがいたなんて!
しかも、冷静に考えればこっちのスティーブ・ウォズニアックの方がはるかに重要な役割を担っているという…。
物語の序盤は、正直、ジョブズの魅力や才能がよくわからなかったです。どこにいくにもTシャツに素足だし、目上の人間に対して偉そうな態度だし。
でも誰よりもウォズの才能を信じているからこそ、革命を起こしてやるという情熱に、どんどん惹かれていってしまいました。
天才たちとの邂逅によって、さらに可能性が広がる展開がおもしろかったです。
◆アップル社の歴史が楽しく学べる
この作品は、アップルのアプリ用に描かれたそうですが、忠実すぎてかえって受け入れ拒否をされたそうです。日の目を見ることなく消えるかと思われた物語が、こうして息を吹き返して、私たちのもとに提供されたことを喜ばしく思います。
さて、アップル社の誕生から始まる『スティーブズ』ですが、ITに詳しくない人でも楽しんで読めると思います。絵もクセがなく、話の展開もスムーズ。多少むずかしい用語は出てきますが、なんとなく読めてしまうのでおすすめです。
私たちが当たり前のように使っているパソコンが、どのように作られていったのか、興味深く学べますよ。