2016年、40年ぶりに再開した少女漫画の金字塔の第一巻。耽美な世界観に酔いしれる
19世紀のある日、人々の前に現れた、男爵とその妻シーラ。そして兄のエドガーと妹のメリーベルで彩られた麗しきポーツネル男爵一家。実際は家族ではなく吸血鬼の「一族」であり、その旅は新しい一族を増やすための計画的なものだった。
成長が止まってしまったエドガーは、最愛の妹のメリーベルのために同年代のアラン・トワイライトに目を付ける。人間であるふりを続けながら、少しずつ彼の懐に忍び込んでゆく。それとは別にポーツネル男爵夫妻も別の成人した人物をターゲットとしていた。魅力的な一家に翻弄される人々の結末とは……。
物語の中核を担う「ポーの一族」を含む4編を収録。様々な時系列においてそれぞれの物語が展開する。萩尾望都、代表作の一つの短編集である。
<みんなの感想>
◆美しくて涙が出そうになります。
当時夢中で読みふけった漫画が2016年に復活して、「あぁ生きててよかった」と本気で思いました。しかも当時と変わらない素敵さで!
いつまでも大人になれないエドガーが感じる孤独は深く、妹のメリーベルに対する愛情から行動を起こそうとする様はいじらしくなります。かたやメリーベルはエドガーを頼り切っていて、それ以上は望みません。
エドガーがもし、今以上を望まなければ、別の未来があったのかなと。
何度でも読み返したくなる作品です。
◆エドガー・アラン・ポーだな
目次のところにそれぞれの4作品の出来事が起こった年代が書いてあった。物語を読んでからそれを見て、計算するに、男爵一家は100年は旅を続けていたらしい。
その間、子供たちが成長しないために一つの村には2年と居られなかったというのだから、壮絶な旅だったのだろうと思う。
100年も経てば、100年前に会った人の子孫もいるわけで、その人々との交流もうまく描かれている。ただ、全ての作品からもの寂しさが漂ってくる感じがした。
そうそう、やはり登場人物の名前は怪奇作家からきているようだ。