芥川龍之介を含む文士7名により綴られた追憶の中の夏目漱石像とは。
上下巻によって収録が異なり、上巻には文士たちによる漱石の思い出が語られ、そして下巻には森田草平の『夏目漱石』より「先生の思い出(抄)」が12編収録される本である。
漱石が生涯最後の十年を過ごした家は「漱石山房」と称され、数多くの文士が出入りしていた。その時期に交流の深かった和辻哲郎や芥川龍之介の回想、そしてロンドンで再会した東京帝国大学の後輩である土井晩翠の訴えなどがそれぞれの文体で表される。他にも、『吾輩は猫である』に登場する教え子寒月君のモデルとも言われる寺田寅彦による追憶や、その作品を『ホトトギス』への掲載を進めた俳人の高浜虚子との手紙など、その内容は多岐にわたる。
多様な視点から漱石像が浮かび上がる、日本の文学界にとっても価値のある一冊。
<夏目漱石先生の思い出 みんなの感想>
◆小説玄人向けの作品
恥ずかしながら夏目漱石の作品は、『猫』『こころ』『坊ちゃん』『それから』くらいしか読んでいないがために、本作に出てくる他の作品がわからず、誠に残念であった。もっと読んでいれば、苗字のアルファベットが誰を表すかなどもピンときたはずであろうが…。
茶屋遊びをしていたエピソードや子供との付き合い等、赤裸々に漱石のプライベートをもうかがい知れた。歴史上の人物はとかく誇張されがちであり実態を知るのは難しいが、本書は極めて忠実な夏目漱石が息づいているように思われる。
◆日本で一番「先生」と言う呼称が似合う人物なのでは!
夏目漱石は穏やかで、紳士的で、気遣いのでき、大人物だ、といろんな人が豊かな言葉で教えてくれる本です。
当時の日本で実際にあったことを文士が思い出して書いているだけなのに、とてもノスタルジックに、文学的に仕上がっています。それは登場人物全員に教養があって、周りの風景や空気を取り込み、思い出しながら文章にしているからだと感じました。
こんな風に周りの人から思い出されるような人生を生きてみたいものです。
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