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第四章 そっちじゃないよって言われても俺はこっちに行きたい

勇者ヤマグチクエストのはじめての冒険譚

第四章 そっちじゃないよって言われても俺はこっちに行きたい

2017年9月20日

 あっという間に僕のコラムも第4回を迎えることとなったわけですが、自分の文章が電子書籍ランキング.comさんのページに掲載され、全国の皆様のおめめに触れ、あな恥ずかしやと乱れ踊るなどしている間に、次回のコラムを入稿せねばならないという、五郎丸も腰抜かすほどのこのルーティンワークにいまだに慣れず、「ええ!もうそんな時間かい!?」と日曜の夕方に現れるあの海鮮一家の娘婿のようにたじろいでしまうのです。
 それでも構図やプロットなどといったものを一切排除し、いかつめのヘッドホンをだらしなくかけて、ジーマなどを片手に思うがままに筆などを走らせていたら、面白い原稿が出来上がっている、みたいな海外モノの天才ハッカーみたいに書けたらいいなと思いながら、パソコンの前に背を丸めて座り、うーんうーんと頭をひねってこの文章を書いております。
 おはようございます、ヤマクエです。

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ファミリーコンピュータ版『ドラゴンクエストⅣ 導かれし者たち』のパッケージ
(C)2017 ARMOR PROJECT/BIRD STUDIO/SQUARE ENIX All Rights Reserved.(C)SUGIYAMA KOBO(P)SUGIYAMA KOBO

 今回のこのタイトル見ただけで「ああ今回はⅣの話ザマすね、オホホ」と二度ほどまばたきをしたそこの白い日傘をさした貴婦人は、相当なドラクエマニアであり、お金持ちだと思います。
ということで、今回は「ドラゴンクエストⅣ 導かれし者たち」のご紹介などをします。
 第3章で「ドラクエⅢ」を、そして4章で「ドラクエⅣ」を紹介するというこの洗練された流れ。こうなるとアホ面で第2章で「ドラクエⅤ」の話をしたことが本当に悔やまれますが、そんなことを感じさせないほど秋は長いですね。
 Ⅳの魅力は何と言っても個性あふれるパーティキャラクターたちだと思います。
 ドラクエⅢは大傑作であることに疑いはありませんが、他作品に比べて主人公以外の仲間たちに関する掘り下げがありませんでした。
 しかし、このドラクエⅣではのちに主人公と旅を共にすることとなる仲間たちが、どのような経緯で勇者を探し求めるのかを、それぞれのチャプターで覗き見つつ、それぞれの正義を貫くための冒険をしていくという構成になっているので、キャラクターへの愛着がそれはもうべらぼうなのです。

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『ドラゴンクエストⅣ』の主人公とそれぞれのキャラクター
(C)2017 ARMOR PROJECT/BIRD STUDIO/SQUARE ENIX All Rights Reserved.(C)SUGIYAMA KOBO(P)SUGIYAMA KOBO

 中でも僕が好きなのは、アリーナ姫を密かに想う神官のクリフト、と言いたいところですが、FC(ファミリーコンピュータ)版での彼はAI行動では神官とは思えないほど死の呪文を永遠に唱え続け、あろうことか即死呪文耐性のある魔物やボスにまでその醜態を晒す始末なので、この度僕が紹介するのはモンバーバラの美人姉妹ことミネアとマーニャです。
 この二人は、自らの父エドガンを殺された過去を持ち、そのカタキを討つための物語なのですが、リメイク版で加わった仲間と「はなす」コマンドなどで見せる、姉のマーニャの人物像はそれはもう楽観的で、すぐカジノやら何やらに手を出すかなり調子の軽い踊り子なのですが、いざ父のカタキを討たんとするときや、父の死を悼む場面ではかなりシリアスで、親思いの優しい一面をのぞかせてくれるそのギャップがとても素晴らしいのです。よく当たると評判の占い師であり、物語を通して終始、冷静でしっかり者の妹ミネアとのコントラストもバランスが良く、この変わった職業の美人姉妹の父親が錬金術師だというのだから、なんだかもう特殊なラノベのようザマす~などと思わなくもないですが、こういった一つ一つバラバラだった物語や人物が運命のうねりに巻き込まれて、一つの大きな冒険に集結していく様は一見の価値あり。別シリーズで人気のあのトルネコ初登場作品でもありますので、興味がある方は是非。

 

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『龍神の雨』道尾 秀介(新潮社)

 こちらは姉妹ではありませんが、同じく兄弟というつながりでご紹介させていただきたいのが道尾秀介先生の「龍神の雨」です。
悪気はなかったんです、本当に。姉妹から兄弟だなんて、苦し紛れなのはわかってるんです。兄妹もいるんですよ?…はい、すいません姉妹ではないです。でも、どうか見逃して下さいませんか?あのほら、「ドラゴン」と「龍神」ってなんだか似ているじゃありませんか?それに雨だなんてなんだかそそるじゃないですか。
 文章構成に鬼のように厳しいマダム達を今の文言でうまく撒くことができたので話をこっそり進めますね。
 「龍神の雨」は誰に感情移入するかでイメージが異なる物語なのですが、どのみち胸にズシッと重い悲しみなどがきます。僕は読後思わず「ずっしー」と口走りました。そしてなんだか凹みました。僕が悪いわけじゃないのに。
 いやこの文章で誰が読むんだって話などが巷を賑わしそうなので1つフォローしておくと、場面が添木田兄妹と溝田兄弟とをいったりきたりするのですが、それを『雨』という共通項がつないでいき、そして『龍神』とはなんなのかということの輪郭を物語の中で見つけていくお話で、どんどんお話に引き込まれていきます。
 物語全体に雨雲のように暗く淀んだ空気を感じさせる、道尾先生の筆さばき。どこにでもあるようでどこにもないオリジナリティをこの作品から感じ取ってもらいたいなと思っております。

 

 今まで以上に苦悩などのあとがそこかしこに見える文章ですが、それなりに頑張ったので、読者諸君、ならびに電子書籍ランキング.comさん、これからもそれなりに可愛がってくれると大変助かります。
 僕はこんなこと書くつもりじゃなかったんですが気付いたらこんなことを書いていましたので、ドラクエⅣに関連したそんな感じのタイトルにしておきます。

 

■今回ご紹介いただいた書籍

413Uwt6-gbL._SY346_『龍神の雨』道尾 秀介(新潮社)
添木田蓮と楓は事故で母を失い、継父と三人で暮らしている。
溝田辰也と圭介の兄弟は、母に続いて父を亡くし、継母とささやかな生活を送る。
蓮は継父の殺害計画を立てた。
あの男は、妹を酷い目に遭わせたから。
――そして、死は訪れた。
降り続く雨が、四人の運命を浸してゆく。
彼らのもとに暖かな光が射す日は到来するのか?
あなたの胸に永劫に刻まれるミステリ。大藪春彦賞受賞作。

 

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